部下に対して「なんで?」「どうして?」と問いかけるとき、その質問はしばしば「でも…」「だって…」という防御的な返答を引き出します。
これは、上司の質問の背後に「能力が低いからではないか」といった仮説や解釈(推測の梯子)が透けて見え、部下が詰問されていると感じるためです。
上司が持つ権威(ポジションや経験)は、たとえ丁寧な言い方をしたとしても、部下には断定的主張のように聞こえがちです。
その結果、部下は本音を隠し、上司の主張に迎合し儀礼的丁寧さに戻ってしまうという悪循環に陥ります。
組織が繁栄するかどうかは、あらゆる階層の社員の主体性、創造力、情熱を引き出せるかにかかっています。
そのためには、まず関係の質を高め、そこから思考の質、行動の質、そして結果の質が連鎖する「成功循環」を生み出すことが不可欠です。
上司は、あらかじめ答えを持っている必要はありません。必要なのは、皆で探求し、話し合うための「質問」です。これは、短絡的な判断や断定を保留し創造的探求を行うダイアログ(対話)への移行を意味します。ダイアログでは、正しいか否かを判断するのではなく、お互いの文脈をストーリーで共有し、ナラティブな対話を通して新たな意味を創り出すことが大切です。
真の質問力とは、リーダー自身の**「あり方 (Being)」を明確にし、本気のコミットメント を周囲に伝えることから始まります。質問を発する際には、自身の思考の道筋を明らかにし、「最高のチームを実現するために、今、私たちに出来ることはどのようなことでしょうか?」 といった、部下の主体性や創造性を最大限に高めるような問いかけへと方向性を変えることが、組織の質的変革へとつながります。