「研修があります」——それだけが、事前に伝えられたすべての情報だった。 集まったスタッフの顔には、隠しきれない不安と緊張が滲んでいた。 しかし数時間後、その同じメンバーが、この宿の未来について目を輝かせながら語り合っていた。 いったい、この場のあいだに何が起きたのか。
「研修があります」——その一言で集まった、混成チームの朝
フロント、調理場、客室——普段は異なる現場で働くスタッフたちが、一室に集まった。若手からベテランまで、外国籍のメンバーも交じった、多様性にあふれるチームだ。
事前の案内はシンプルすぎるほどシンプルだった。「研修があります」。それだけ。 何のために集められたのか、何をするのか、何も知らされていない。
研修開始前の室内には、重い空気が漂っていた。「何が始まるんだろう」「自分たちに何を求められているんだろう」——そんな言葉にならない問いが、それぞれの表情に滲んでいた。
この沈黙と緊張こそが、変化の出発点だった。
不安が口を開かせ、本音が場をつくる
体験学習型の研修では、最初の「戸惑い」を大切にする。
答えのない問いと向き合い、まずは動いてみて、振り返る。その繰り返しのなかで、頭で理解するのとはまったく違う気づきが生まれる。
この日も同様だった。最初は探り合うような空気だったメンバーが、やがて少しずつ声を出しはじめた。ベテランスタッフの言葉に若手が反応し、外国籍メンバーの視点が場に新鮮な問いを投げかける。
現場ではなかなか交わることのない「異なる経験と文化」が、同じ場に集まったとき、対話は一気に深まりはじめた。
歴史と伝統が土台になって、「新しい価値」が生まれる
このお宿が大切にしてきたもの——積み重ねた年月、変えてはならない文化、受け継いできた心意気。それは誇りであり、同時に重みでもある。
「伝統を守る」と「新しい価値をつくる」は、対立するように見えて、実は深いところでつながっている。
振り返りのなかで、あるスタッフがこう語った。「自分たちがここにいる意味を、初めてちゃんと考えた気がする」。
歴史はすでにある。それを土台に、自分たちが何を積み上げていくか——その問いが、場の温度を変えた。
多様性は「課題」ではなく、最大の「資産」だった
異なる部門、異なる年齢、異なる文化背景。これらは時に、組織の摩擦や課題として語られる。
しかしこの日、それは違って見えた。
調理場の視点だからこそ見える「おもてなしの本質」、客室スタッフだからこそわかる「お客様の小さな変化」、外国籍メンバーだからこそ持てる「外からの問い」——それぞれの経験が重なったとき、どこか一つの部門だけでは絶対に辿り着けない答えが生まれていた。
多様性は、扱い方次第で組織の最大の強みになる。この日、その可能性を目の当たりにした。
青天井の伸びしろを前に、私たちが感じたこと
研修の終わりには、最初の沈黙が嘘だったかのように、メンバーが自分の言葉でこの宿の未来を語っていた。
夢物語ではない。自分たちが関わり、自分たちが作り上げていく価値の話だ。
私たちがこの仕事を続けているのは、こういう瞬間に立ち会うためだと、改めて思う。
足かけ12年、変革のお手伝いを続けてきた有馬温泉の老舗旅館から、今回新たなご縁をいただいた。その信頼に報いるためにも、このお宿のスタッフと一緒に、丁寧に歩んでいきたい。始まったばかりの旅は、青天井だ。
まとめ
「研修があります」という一言から始まったこの日が、スタッフ一人ひとりにとって「自分たちで未来をつくれる」と気づいた起点になれば、これ以上のことはない。
組織は、人が変わると動きはじめる。旅館・ホテル業のスタッフ研修・チームビルディングについてのご相談は、お気軽にどうぞ。
コメント